装飾について その3 *3/21画像の一部を変更

モリスにとって工芸美術は、自然の尊重、素材の知識、技術の知識、生活への知識、文化や歴史への知識を活用することで生み出されるべきものである。美を事物の生成に必要な時間*1の遵守によって裏付けること、それこそが、利潤を最優先に計算された労働に対…

装飾について その2

大学を出て23歳の1856年、モリスは建築家ジョージ・エドモンド・ストリートの事務所に就職。ここで建築とプロダクトデザインへの情熱を授かるもわずか9ヶ月で退社したのち、しばらくぶらぶらしていたらしい。ぶらぶらしている間に友人のロセッティ*1らと共に…

装飾について その1

柳宗悦の民藝運動はウィリアム・モリス(1834〜1896)のアーツアンドクラフツ運動に連なるが、その柳はモリスに対して、「正しき工芸の美を知らなかった」と批判してもいたことは、前回触れた。美意識に煩わされた工芸であり、充分にゴシックでないと言って…

柳宗悦と芹沢銈介 その3

柳は、まず「直観」によって事物の美を見出し、しかるのちに、よくよく調べてみるとそれが「正しく作られている」モノであることが判明するのだ、と言っている。彼は色んなところで同じことを言っているからいちいち引用しない。民藝の美とは、柳によれば、…

柳宗悦と芹沢銈介 その2

民藝と芸術との境界線はどこにあるのだろうか。柳は個人の表現に冷たい。「天才の芸術」をまったく評価しないわけではないのだが、冷遇して黙殺しあわよくば視界から消えてほしいというような、底意地の悪さを感じさせる。なぜなのか。その理由は、柳が考え…

柳宗悦と芹沢硑介 その1

我が家に置かれている茶箪笥には、傷を隠すためか芹沢硑介(1895〜1984)のカレンダーが引き戸の矩形に合わせてトリミングされ、貼り付けてある。洋風とも和風とも付かぬ、いつの時代に作られたものかも曖昧であるようなかわいらしいデザインのカレンダーで…

ガストン 〜珠玉のフィリップス・コレクション

●『Native`s Return(帰郷)』(1957) フィリップ・ガストン(1913-80) もともとはピカソ、メキシコ壁画運動(オロスコやシケイロス)、デ・キリコなどの影響の下に絵画を制作していたヒト。初期の頃から既にKKKを画面に登場させている。抽象表現主義を経…

マザウェル 〜珠玉のフィリップス・コレクション

●『Chi ama, Crede(愛する者は信じる)』(1962) ロバート・マザウェル(1915 – 1991) ヨーロッパ(主にピカソ)のコピーではない独自の原理に基づいて制作すべきと考えたマザウェルは、既に若くしてシュルレアリスムの首領アンドレ・ブルトンに絶賛される…

エイヴリー、ロスコ 〜珠玉のフィリップス・コレクション

●『Black Sea』(1959)、『Girl writing』(1941)ミルトン・エイヴリー(1885 -1965) 閉じた輪郭を用いての色面構成やデフォルメはマティスから学んだのだろう。選ぶモチーフもマティスに似ている。ただし、モチーフは似ていても何を描くかはかなり異なって…

プレンダーガスト、エイキンズ 〜珠玉のフィリップス・コレクション

●『パッリア橋』(1898-99、1922)、『ファンタジー』(1917) モーリス・プレンダーガスト(1858 –1924) 一見して、色彩の使い方がボナールにそっくり。なぜ突然アメリカにナビ派が?と思うが、プレンダーガストはフランスへの留学経験を持ち、留学中にボ…

ピッピン、ホッパー 〜珠玉のフィリップス・コレクション 

*10/25 一部改訂 すもも画報にしては珍しいことに、今回は展覧会の話題である。私は最近、「すもも画報見てますよ」と声をかけられたのが嬉しくて更新を励もうとしているところだ。『モダン・アート、アメリカン 珠玉のフィリップス・コレクション』*1へ行…

すもも画報 in 台湾 最終回

駅からは懲りずにまたバスに乗った。今度は目的地への到達に成功するも、乗車賃の15元、これが小銭で15元きっかりでないと払えない仕組みになっているのだが、我々は小銭15元きっかりを持っていない。小銭が無いよどうしようと、単語しか合ってない英語&ジ…

すもも画報 in 台湾 その4

お腹を満たしダンスも踊ったところで、部落の集会所も兼ねている食堂を離れ居住区の見学へと向かう。カリによれば、ここで栽培した椎茸は台湾の高級ホテルに高値で取引してもらっているが、とは言え、当初は農作物を売って金(カネ、貨幣)を得ようと画策し…

すもも画報 in 台湾 その3  *10/11一部改訂

ツアー初日のこと、沖縄に行った経験のあるパートナーが、バスの窓から見える山間部の墓地を見て沖縄と同じ亀甲(きっこう、かみぬくー)墓だと指摘する。石敢當(いしがんとう)もある、とさらなる指摘。与那国島から台湾へは111キロだが、漂着した人々はと…

すもも画報 in 台湾 その2

東京に残してきた現在入院中の私の父*1は、大酒飲みである。彼が夜中の3時より前に帰宅したことはない。酔っぱらうと辺り構わず「消えろ、消えちまえ、小さなロウソクよ!」とかヤリ出す。子供心に、コワイし、恥ずかしかったことを思い出す。酒が原因で身体…

すもも画報 in 台湾

9月30日。台風と共に夕暮れ時の台北へ到着し、ホテルにトランクを預けて市内を散策する。日本とよく似ているけれどちょっとずつ何かが違う、どこか懐かしいが郷愁に浸りきることもできない、そんなパラレルワールドみたいな台湾の町並みを実見するのはこれが…

最近の展覧会から(3)

作品を成立させるためには私の身体の一部(キスや靴)が必要であり、必要とされることは私にとって名誉であり利益であるかも知れないが、しかし一方で、それはもはや誰のモノとも知れぬモノと成り果てる。靴もキスマークも、私のモノであったという事実を必…

最近の展覧会から(2)

今回展示されている橋本の作品は他に四つあるが、中でも『ガラス越しの口づけ』は『階段の上に置かれた靴』とほぼ同様の構造を持つものであるから、ここでは詳述しない。どんな作品か、ぜひご自身で確かめられたい。二つの作品が良く似たものであることは決…

最近の展覧会から

ギャラリー*1の扉をくぐる前にまず、半地下にあるギャラリーへと降りる階段の最上段に、ちょこなんと揃え置かれた使い古しのスポーツシューズが目に入る。はっきり言って汚い靴であり、甲の部分の破損と摩耗が激しい。どこをどうすればこんなにボロボロにな…

幸運について

入院中の父を見舞った帰り道のこと、時刻は7時をまわってあたりはもう暗い。私は背後から近づいてきた車に乗った男二人から声をかけられた。すいません、ちょっとすいません、道を訊きたいわけじゃないんですけど。はい、はい、なんですか?今法事からの帰り…

『試行と交換』ワークショップ 橋本聡

横浜は日ノ出町にある『急な坂スタジオ』にて開催中のワークショップ、『試行と交換』*1に行ってきた。私が参加したのは橋本聡のワークショップである。 橋本聡の多くのパフォーマンス・イベント*2同様、今回の「ワークショップ」でもまた作家は、事物や人々…

篠崎英介 『Mowing-Devil』

篠崎英介の個展『Mowing-Devil』*1へ行ってきた。なんだか聞き慣れない名詞が展覧会タイトルになっている。Wikipediaによると、「Mowing-Devil」とは17世紀にイギリスで発行された、ミステリーサークル(crop circle)に関する最も古い報告記録(チラシ)の…

公園ができるまで  *5/2リンクの不備を修正

すぐれたドキュメンタリー(映像レポート)、『宮下公園 TOKYO/SHIBUYA(前・後編)』について。 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/351 (前後編併せて一時間ほどです。) ご覧のように、これほど分かり易い「危機」はない。これは民主主義…

ブックマークを追加しました

ブックマークを追加しました。「リテラエ・ウニヴェルサレス」と「ASLSP アスレスプ」の二つ。 でも、ブックマークを追加したら、ブックマーク表示で全部表示されなくなっちゃいました。なんで制限あるんだろ?クリックすると全部見ることはできるんですけど…

「X(dead letter)」について 2   4/21改

(つづき) 「これを知らねばならない」という文の、「ねばならない」とは何か、これを分析せねばならないと、デリダは言う。「ねばならない」についての問いは、判断するとはどういうことか、ということであり、つまりこれは批評の問題でもあり制作の問題で…

「X(dead letter)」について

そもそも分析とは何か。分析が分析であるためには、抵抗が先立たねばならない。抵抗なくして分析はなく、分析は自らへの抵抗との関係によってのみ、分析であり得る。そしてまた、分析とは抵抗の正当な主体(主権)を見出すことによって解決を、隠された意味…

ガンバレ!!

私はテンション上げたい時はこの曲です。 Everyday in the week I'm in a different city If I stay too long people try to pull me down They talk about me like a dog Talkin' about the clothes I wear But they don't realise they're the ones who's …

映画『グラン・トリノ』

敬愛する知人が「ひどい映画」と評していたので、この映画を観てみることにした。と言うのも、私の中でのクリント・イーストウッド作品に対する評価は必ずしも「ひどい」ものではなく、その評価は意外なものに思われたからだ。とは言え、もう少し詳しく言う…

柄谷行人 × 岡崎乾二郎 対談

東京の四谷にある研究所、四谷アートストゥディウムにて、『岡崎乾二郎対談シリーズ----5 ゲスト柄谷行人』*1が行われ、聴講した。進行は、3時間ほどの枠の中2時間くらいを柄谷行人による講義が占め、残りの時間が柄谷と岡崎乾二郎とのやりとりで占められ…

Blockhouse Sunagawa (おまけ)

友人の木原進さんより、以下のページを紹介していただきました。 ここでBlockhouse Sunagawaの写真が公開されています。 http://kenjirookazaki.com/info/jp/2010/02/blockhouse-sunagawa.html http://picasaweb.google.com/artictoc.engawa/BlockhouseSunag…